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さすらいの情報収集家Kです。

さて、今回のテーマは、
「税制改正大綱
についてです。
しっかりチェックしておきましょう!

令和2年税制改正大綱 大企業優遇か?

令和2年税制改正大綱 大企業優遇か?

令和2年度(2020年度)与党税制改正大綱が決定されました。
今年10月に実施された消費税10%が
景気に悪影響を及ぼす気配が色濃くなってきた中で、
一体どのようなものになったのか?
チェックしてみましょう。

 ●与党税制改正大綱とは?

政府・与党が内閣府に設置された税制調査会を中心に
翌年度以降にどのように税制を変えるべきかを話し合い、
まとめたものです。

税制調査会のメンバーは、
政治・経済関連の大学教授や新聞社の代表や
論説委員、金融系エコノミスト、
大企業の社長・会長などで構成されています。

税制調査会によってまとめられた税制改正大綱に従って、
政府によって税制改正法案としてまとめられ、
通常国会に提出されます。

提出された税制改正法案は、ほとんどの場合、
賛成多数となり可決されることから、
与党の税制改正大綱が次年度の税制を
実質的に決定するものとして毎年注目されるのです。

●来年度の税制改正は「イノベーションの促進」が主眼

令和2年度の税制改正大綱によれば、
その基本的な考え方が概ね次のように示されています。

  • 令和時代は、人口減少と少子高齢化が一層進む。
  • 社会保障などの諸制度を人生100年時代に
    ふさわしいものに変えなくてはならない。
  • そうするためには、新時代に向けた
    イノベーションの促進など成長基盤が必要。
  • イノベーションのためには、企業が資金や技術を
    開発・活用していくための税制面での後押しが必要。
  • 次世代の最大の資源となる「データ」を利活用できる
    環境整備や5Gインフラの普及促進。
  • 持続的な経済成長には、企業の海外展開の促進と
    その果実の国内への還流が重要。
  • 人生100年時代を迎え、高齢期の就労や働き方の多様化に対応し、
    私的年金や中小企業年金の普及・拡大に取り組む。
  • 地方創生を促進し、地方税の拡充、税源の偏在性を
    小さくする地方税体系の構築を進める。
  • 地方への人や資金の流れを高めるために地方拠点強化税制や
    企業版ふるさと納税の拡充など、税制面での措置を講ずる。
  • 「経済再生なくして財政健全化なし」の方針の下、
    財政健全化に大きな道筋をつけてきた。
    今後も推進し、2025年度のPB黒字化・債務残高の
    引き下げを目指す。

ザックリと俯瞰してみると、
「令和の新時代を迎えるためには
イノベーションの促進が必要なので
税制面で後押しする」ということが
主眼に置かれている内容になっています。

こうした基本的な考え方に基づいて
主要項目を見てみましょう。

●デフレ脱却と経済再生

デフレ脱却と経済再生を進めるために、
主に大企業に対して税制面での措置
講じるものになっています。

  • オープンイノベーションを進めるため、事業会社による
    一定のベンチャー企業への出資に一定額の所得控除を認める。
  • 企業の内部留保を還流させるため、賃上げや研究開発投資に
    消極的な企業には租税特別措置の適用を停止する。
  • エンジェル税制を見直し、クラウドファンディングを通じた
    エンジェル投資の利便性を向上するなど、
    ベンチャー企業に対する資金流れを強化。
  • 5Gシステムを構築するために、全国基地局の前倒し整備を
    支援するべく、5Gシステムにかかる
    一定の投資について措置を講じる。

●中小企業等の支援、地方創生

中小企業においても投資や支出拡大を促すための
税制措置を講じるものになっています。

  • 中小企業からベンチャー企業への出資に
    所得控除を認める措置を創設。
  • 中小企業等の設備投資促進のため、
    一定の償却資産に係る固定資産税の特例措置を創設。
  • 交際費課税の特例は、2年間延長。
  • 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の手続きを簡素化し、
    税額控除割合を現行の3割から6割に上げた上で5年間延長する。
  • 低未利用地の活用を促すため、一定の譲渡所得を対象に
    100万円の特別控除を設ける。
  • 土地や家屋の使用収益している者がいるにもかかわらず
    所有者不明の土地等について、当該使用者に通知を行った上で、
    使用者を所有者と見なして課税することができるようにする。
  • 日本酒の輸出拡大に向けて「輸出用の製造免許」を新たに設ける。

●経済のグローバル化・デジタル化への対応

経済のグローバル化・デジタル化が進む中で、
国際課税原則(「恒久的施設なければ課税なし」等)が
適切に機能しない問題が顕著化しています。

例えば、デジタルサービスは簡単に
国境を超えることができるので、
サービスは国内で行っていながらも
物理的な拠点は税率の安い国に置き、
租税回避するといった事です。

そのため、新興国などにおいて外国企業を誘致するために
法人税の引き下げ競争が活発化しており、
歯止めをかけることが国際的な問題となっています。

今回の税制改正大綱では、具体的な制度を
創設するようなものにはなっていませんが、
国際協調的に検討を進めていく事が示されています。

●経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し

全体的には、働き方の多様化や人生100年時代に
対応するための税制を検討していく事としています。

その中で、確定拠出年金、NISAなどの
個人の資産形成に対する税制優遇措置、
未婚のシングルマザーを想定した
寡婦控除の拡大などが具体的な措置として示されています。

  • 確定拠出年金などの加入可能年齢の見直し、
    中小企業向け制度の対象範囲の拡大等の
    私的年金の見直しに伴い、税制上の措置を適用する。
  • 少額投資非課税制度(NISA)を見直す。
    一般NISAは口座開設可能期間を5年延長する。
    1階部分はつみたてNISAと同様とし、
    2階部分は安定した資産形成に不向きな商品を除く。
    つみたてNISAは5年延長し、
    ジュニアNISAは新規の口座開設を2023年までとする。
  • 未婚のひとり親に寡婦(夫)控除を適用する。
    寡婦に寡夫と同じ所得制限(500万円)を設ける。
    住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の
    記載がある場合は控除の対象外とする。

その他にも「納税環境の整備」や
葉巻タバコの一種である「リトルシガー」の
段階的な増税などが示されています。

詳しく確認したい方は、自民党HPでご確認ください。

※自民党 令和2年度税制改正大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/140786.html

●大企業・高所得者などへの税制措置が目立つ

大方針は「イノベーションだ、新時代への適応だ」と
大風呂敷を広げていますが、実際の制度を見てみると、
結局のところ大企業や高所得者・富裕層への
税制措置ばかりが目につきます。

例えば、「デフレ脱却と経済再生」
と銘打った上で実施される措置は、
ベンチャー企業への投資や5Gへの投資などに対する
税制上の優遇措置などです。

これは明らかに大企業などの
資金的に余力のある企業の税負担が軽くなるものですから、
投資などできない中小零細企業には無縁のものです。

同じように、「経済差夜会の構造変化を踏まえた税制の見直し」
と打ち出したものでも、確定拠出年金やNISAなどの
個人資産の形成に対する優遇措置ですから、
そもそも低所得者や貯蓄や投資などの回す余裕のない人には、
何の恩恵もないものになっています。

つまり、一定の所得や資産のある人だけが
恩恵を受けられるものになっているわけです。

では、どうして大企業や富裕層向けの
優遇措置ばかりになってしまっているのでしょうか?

●すべての元凶はPB黒字化目標

大企業や富裕層向けの優遇措置を進めることが、
必ずしも政権与党にメリットがあるわけではありません。

当然、国民からの支持は得にくいでしょうし、
格差が拡大することになりますから、
政権への不満も高まることになるでしょう。

ですが、いまの政権はプライマリーバランス(PB)
黒字化目標を掲げているため、
財政出動がしにくい状況にあるのです。

現政権の一丁目一番地は「デフレ脱却」であるにも関わらず、
確実に消費を冷え込ませる消費増税を実施してしまうのも、
PB黒字化目標があるためです。

要するに、「政府はお金は出さず税収増やしつつも、
経済は活性化したい」という考えなのです。

そもそも、経済を活性化させるためには、
誰かが投資する必要があります。
投資があるからリターンがあるわけです。
当然ですね。

ですが、政府は金を出したくないので、
企業に出させようと考えるわけです。
ところが、多くの中小零細企業などには
投資する余力はありませんから、
必然的に余力のある大企業を対象とする
税制優遇措置になってしまうわけです。

その結果、枚挙に暇がないほど
大企業には様々な税制優遇措置ができ、
実質的な減税政策がとられてきたのです。

ただ、大企業の減税ばかりやっていては
税収が減る一方ですから、その穴埋めとして
どこかで増税しなくては税収が維持できません。

そこで、消費増税を進めることにしてきたわけです。

※過去の法人税・所得税・消費税の推移を見れば、
その事実を明確に示していることがよくわかると思います。
その辺りについては、過去の記事をチェックしてみてください。

参考)2018年度税収 バブル期越え過去最高

つまり、今回の税制改正もイノベーションだのなんだのと
大義名分はいろいろ言っていますが、過去の改正と何も変わらず、
「いつも通り大企業や富裕層の実質税率を軽減するものになった」
と言えそうです。

以上、いかがでしたでしょうか。

一見聞こえの良い「新時代にあったイノベーション」を
掲げた税制大綱ですが、その中身を見てみると
結局いつもの大企業や富裕層向けの減税措置だったことが
理解できたのではないでしょうか。

消費増税で景気悪化が確実となっている状況で、
いつもの税制改正という状況ですから、
来年度の景気悪化は避けられないと言えそうです。

そう考えると、税制改正の考え方や方針自体が
一番イノベーションを必要としているのではないでしょうか。