お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。

さて、今回のテーマは、
「M&A絡みの節税への規制
についてです。
しっかりチェックしておきましょう!

M&A絡みの節税を規制へ 財務省が方針決定

M&A絡みの節税を規制へ 財務省が方針決定

何かと話題のソフトバンクGですが、
2018年3月期の連結決算で
純利益1兆円を計上していました。
ですが、その年に納めた法人税はなんとゼロでした。

財務省は、このソフトバンクGを
念頭においた規制を実施する方針を決定したようです。

一体どのようなものなのか、まとめてみます。

●M&A絡みの節税を規制へ

まずは、ニュースからです。

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M&A絡む節税の抜け穴封じへ ソフトバンクGが発端 財務省「意図的な赤字」問題視

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51195880Z11C19A0MM8000/
2019/10/20 日本経済新聞

財務省は、ソフトバンクグループ(SBG)が用いた
M&A(合併・買収)に絡んだ節税策を防止する方針を固めた。
同一グループ内の資本取引で実態に変化がないにもかかわらず
巨額の赤字を意図的につくり出して、
ほかの部門の黒字と相殺して法人税を減らす手法を認めない。
予期せぬ大規模な節税につながった制度の抜け穴をふさぐ。

財務省が問題視しているのは、
子会社などが中核事業を放出して
企業価値が落ちた状態にしてから売却し、
簿価と売却額の差だけ赤字を発生させる仕組みだ。
このため、子会社の中核事業を手放す際には
簿価も目減りさせるルールを軸に検討する。
子会社を売却しても簿価と売却額の間に差がなくなり、
意図的に赤字をつくれなくなる。

与党の税制調査会での議論も踏まえて、
2020年度の税制改正大綱に
関連法令の見直し方針を盛り込みたい考えだ。

SBGは買収したアーム・ホールディングス(HD)と、
その中核事業を担う子会社の「アーム・リミテッド」
に関する資本取引で大規模な節税を実施した。
開示資料などによると、SBGは18年3月にリミテッド株の4分の3を
アームHDから配当という形で吸い上げた。
これにより、アームHDの実質的な価値は大きく目減りした。

SBGは買収時より価値が大幅に落ちたアームHD株の8割弱を
同じく傘下にあるソフトバンク・ビジョン・ファンドなどに
売却して赤字を発生させた。
この赤字をほかの事業で生じた黒字と相殺し、
SBGの法人税負担はゼロになった。
中核事業のアーム・リミテッドは親会社が変わったが、
SBGの傘下にあることに変わりない。

一つ一つの取引に違法性はなく、制度の抜け穴となっていた。
国税庁からの相談を受け、財務省は今夏ごろから
対策の検討を始めていた。一部有識者の間では、
包括的に税逃れを制限する規定をつくるべきだという意見もあった。

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ソフトバンクグループ株式会社(SBG)は、
2018年3月期の連結決算で
純利益約1兆円(約1兆0389億円)を計上していました。

ですが、その年に納めた法人税は
なんとゼロ円だったことが発覚。

これは、脱税したのではなく、現在の制度上で
合法的に節税した結果だったこともあり、
注目を集めていました。

今回、財務省はSBGが行ったような
抜け道をふさぐ方針を決定したということです。

●SBGの手口はどのようなものだったのか?

1兆円も純利益があったのに、法人税をゼロにした仕掛けは、
子会社を使ったM&Aを繰り返すことで
大幅な赤字に転換するものでした。
全体的な取引は次の図の通りです。

ソフトバンクグループ 節税しくみ

まず、SBGは16年9月、英の持株会社
アーム・ホールディングス(HD)の全株を
3.3兆円(当時の為替レート)で買収しました。(図①)

このアームHDは、子会社にスマホ向け半導体大手の
アーム・リミテッドを持っており、企業価値の大半は
子会社アーム・リミテッドにある状態です。

2018年3月、SBGの決算月。
アームHDが株主であるSBGに配当として、
アーム・リミテッドの株75%を現物配当します。(図②)

この段階で、アーム・リミテッドは
アームHDから切り離され、
事実上SBG直下の子会社になりました。

アーム・リミテッドの株を受け取ったSBGは、
同日、アームHD株の78%を
ソフトバンク・ビジョン・ファンド等に譲渡します。(図③)

これで、法人税ゼロとなる節税完了です。

「??どゆこと?グループ会社間で
株の受渡ししただけじゃ・・・?」
と思われる方が多いと思います。

確かにそうなのですが、
企業価値に着目してみると
カラクリが見えてきます。

図①の段階では、アームHDの企業価値は3.3兆円ですが、
図②の段階ではリミテッド株を25%しか持っていないため、
会計上の評価額を0.7兆円まで減額修正したのです。

そして、図③で評価額の下がったアームHD株の
78%相当をビジョン・ファンド等に譲渡することで、
損失を確定させたわけです。

その損失額は、(購入額3.3兆円-評価額0.7兆円)×78%
=2.03兆円になるのです。

こうして、純利益1兆円あったSBGは、
2兆円の損失を発生させることで赤字転落し、
法人税ゼロを実現させていたのです。

とは言え、業績が悪化したわけでもないに、
グループ間で株を付け回すだけで
自由に赤字に転換できてしまうわけですから、
これはさすがに脱税ではないでしょうか・・・?

●脱税ではないのか?

当然、国税当局も相当いろいろ考えたようです。

法人税法第132条の「行為計算否認規定」
というものがあります。

これは、組織再編などで税負担を不当に減少させたと
国税当局が判断した場合は申告内容を否認できる
というもので、今回のSBGのためにあるようなものです。

ただ、何をもって「不当」とするかは
法律上の明文規定はなく、見解の違いが生じやすいため、
裁判に持ち込まれる可能性が高いのです。

実は、国税当局はこの規定を適用して、
大手レコード会社「ユニバーサルミュージック」に
約58億円の追徴課税していたのです。

ところが、ユニバーサルミュージックは
不当だとして処分の取り消しを求めて提訴。

2019年6月に東京地裁は「経済的合理性がある」と判断し、
国税当局の処分を取り消す判決を言い渡しています。

今回のSBGの件でも同規定の適用を検討したでしょうが、
裁判のことも考えると、不当に法人税を減少させた
と立証することができないと考えたようです。

こうして、SBGの法人税ゼロが認められたのです。

●2020年税制改正で見直される方針

国税当局としてはやはり見過ごせないですから、
税制を変えてほしいということで、
冒頭のニュースに繋がるわけです。

財務省は、国税庁からの相談を受けて、
M&Aによる簿価の取扱いで差額をつくりだす手口を
使えなくする方向で検討を進めているようです。

順調にいけば、2020年の税制改正大綱に
盛り込まれるとのことです。

ただ、税制が整備されるまでの間に
またSBGが動くかもしれませんが。。

以上、いかがでしたでしょうか。

多くの人には関係ないことのように思うかもしれませんが、
大企業にはこのようにして法人税を支払わない
抜け道がいろいろとあり、企業からとれなかった税金は
消費増税のように結局国民の負担にされてしまうのです。

過度に法人税を増やす必要はないと思いますが、
誰が見ても納得のいくような正直な納税がされるように、
しっかりと制度設計してもらいたいものですね。