こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

さて、今回のテーマも前回に引き続き、
「インボイス制度の影響」についてです。

今月から実施された消費税増税と
軽減税率制度の開始。
キャッシュレス決済の還元制度がある分、
増税の影響を受けずに、
もしくはそれ以上にお得な買い物を
されている方もいらっしゃるのではと思います。

ですが、今回の制度変更は、
消費税の申告・納付においては
大きな変化が起こっており、
それは4年後の令和5年(2023年)に
予定されているインボイス制度への
ステップであることは間違いありません。

そして、このインボイス制度は小規模事業者、
特にフリーランスや自営業等の
「個人事業主」に多大な影響が想定されます。

ということで、今回もそのインボイス制度に
関わる内容についてまとめていきたいと思います。

インボイス制度が個人事業主に及ぼす影響とは?-②影響を回避する選択肢

■インボイス制度が個人事業主に及ぼす影響とは?-②影響を回避する選択肢

前回は、消費税計算やインボイス制度の概要について
お話をしました。

消費税は間接税であり、事業者のみが
申告・納付する税金なのですが、
その消費税の計算方法として2023年10月から
通称:インボイス制度、「適格請求書等保存方式」への
変更が予定されています。

このインボイス制度が実施されると、
販売側(売り手側)が発行する請求書や領収書等に
適格請求書発行事業者の登録番号が必要になります。
ただ、適格請求書発行事業者の登録には、
消費税の課税事業者である必要があります。

自営業やフリーランス等である個人事業主は、
大半が免税事業者であり、消費税納付が免除されています。
ですが、インボイス制度実施後は、
免税事業者のままでは商品・サービスの対価に
消費税分を乗せて請求することが実質的に難しくなります。

その為、個人事業主は、

  • 免税事業者継続で消費税請求を諦める
  • 課税事業者選択で消費税申告と納付を実施する

このどちらかを選ぶ必要があります。

このあたりの内容を、
「インボイス制度が個人事業主に及ぼす影響」
ということでお話をしました。

今回は「影響を回避する選択肢」ということで、
上記以外の選択肢があるのか?
上記選択肢を回避できるのか?
ということについてお話をしたいと思います。

●免税事業者の消費税分請求がなぜ難しいのか?

まず、前回の内容を踏まえて、
インボイス制度開始以降に
自営業者やフリーランスのような
個人事業主の人が免税事業者を継続した場合、
なぜ自分の商品・サービスの対価に消費税分を
乗せる事が難しくなるのか?
ということをきちんと説明します。

最初にお話しするのは、国税庁側のスタンスです。
国税庁はそもそもとして、現段階においても
免税事業者が消費税分を対価に乗せることを
推奨はしていません。
消費税分を対価に上乗せするのは誰でも可能なので、
それを「NG」とは言わないまでも、
「消費税を納めないのであれば、消費税分請求しないで」
というのが、根本的な考え方です。
ですが、一般的な商習慣として、事業を行う人であればだれでも、
消費税分を対価に付加しているというのが現状です。

しかし、インボイス制度導入後はこの商習慣が壊されます。
仮に免税事業者が消費税分を請求しようとすると、
相手先からは「適格請求書」の水準を満たした書面発行を
求められてしまうため、それが出来ない場合は
消費税請求を断念せざるを得ない、ということです。

何故、インボイス制度後は支払側(買い手側)が
それを要求できるようになる(だろう・それが濃厚)かというと、
支払側が損をしてしまうからです。

前回も触れましたが、消費税納付の計算式は簡単に説明すると、
「受け取った消費税額-支払った消費税額」
の残額分となります。

インボイス制度導入後は、適格請求書のルールに則った書面、
つまり、「適格請求書発行事業者の登録番号」が付与された
領収書や請求書等が無いと、支払側は自社の消費税計算の際、
その取引で支払った消費税を差し引き出来ません。
要は、免税事業者に支払った消費税は、
支払側が被ることになってしまうのです(※)。

※特例や経過措置も存在します。詳細は下記URLご確認ください。
国税庁 適格請求書等保存方式
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0017007-067_14.pdf

●影響を回避する選択肢は存在するのか?

前段までを踏まえ、個人事業主で免税事業者の人が、

  • 免税事業者継続で消費税請求を諦める
  • 課税事業者選択で消費税申告と納付を実施する

以外の選択肢を選ぶことが出来るのか?
他の選択肢を選ぶとどうなるのか?
ということについて
具体的に検討していきたいと思います。

当然、これは現段階での検討内容ですので、
直前になった場合は特例により問題が解消されたり、
他の有効な案が出てきたり、逆に下記案がNGになったり、
ということはあり得ますので、
あくまで「現段階の検討事例」ということでお考えください。

1: 1,000万円超の売上にしてしまう

1,000万円超の売上になると、
そもそも免税事業者の対象になりません。
つまり、事業を拡大するという話です。

【メリット】
  • 適格請求書発行事業者登録が可能
  • 消費税請求は全く問題無く実施
  • 法人化等も容易に検討しやすいレベルなので、
    個人事業のままでは難しい節税等も実施出来る
【デメリット】
  • 課税事業者の為、消費税申告と納付が必要
  • 事業規模が拡大しているので、現段階で
    副業等のスタンスで取り組んでいる人には厳しい
  • 回避策というよりこれ以外の選択肢が無くなる策

2:複数名で会社を立ち上げる

自営業やフリーランスとして活動している
知人や仲間たちと会社(法人)を設立するという案です。

【メリット】
  • 適格請求書発行事業者登録が可能
  • 消費税請求は全く問題無く実施
  • 法人格を得る事で信用度UP
  • 法人の事業収益と個人の報酬を分けられるので、
    確定申告もしなくて済むようになる
【デメリット】
  • 法人としての税負担(法人税、消費税等)
  • 複数名存在している為、支払・契約時にルールが必要等、
    個人事業時代ほど自由に出来ないことが多くなる
  • 売上や利益が同等なメンバーなら良いが
    差があるときに報酬配分等で揉める可能性

3:強力な商品・サービスで取引先に対して優位になる

個人事業で免税事業者水準の規模の事業者でも、
強力な商品やサービスを取り扱っていれば、
販売側の方が、立場が強くなります。
つまり、強い立場を利用して、
支払側に消費税分負担を甘受させる方法です。

【メリット】
  • 事業規模次第で免税事業者継続可能
  • 消費税請求も実施可能
【デメリット】
  • 消費税分を(8%か10%)を購入者が被っても購入したい
    というレベルの商品・サービスが提供出来るかどうか
  • 購入者が消費税の課税事業者である場合、
    消費税負担分は不満になっている為、競合が生まれたら
    すぐに取引先を失ってしまう

4:個人(一般消費者)専門店として活動する

前回触れましたが、消費税は一般消費者も支払うものの、
間接税のため事業者以外は申告・納付は行いません。
その為、一般消費者のみを相手にする事業であれば、
適格請求書の条件を満たす領収書や請求書の
発行を求められないということです。

【メリット】
  • 事業規模次第で免税事業者継続可能
  • 消費税請求も実施可能
【デメリット】
  • 事業主・法人名義での利用等、領収書や請求書の発行を
    希望する顧客との取引が出来ない、または断る必要がある
  • 新規顧客には取引や商品提供を実施する前に、
    支払時のトラブル防止の為、一般消費者かどうか
    確認する必要がある
  • 上記により売上が下がる可能性

とりあえず、現段階としてはこんなところでしょうか。。。

お分かり頂きたいのは、「消費税」という観点において、
インボイス制度実施が予定されている2023年10月以降は、
小規模で活動する個人事業主の方にとって
現在のように気軽に消費税を請求したりできなくなる
ということです。

消費税を請求するにしても、しないにしても、
何かしらの選択をご自身が行った上で、
それに沿ったルールで活動することが
求められる状態になるはずです。

ただ、一つ加えるとすると、インボイス制度実施後、
上記にあるような選択回避策が取れない場合、
現段階で免税事業者水準の個人事業主の方は、
「課税事業者選択で消費税申告と納付を実施する」
という方が、まだ手元に残るお金は多くなるはずです。
これは覚えておいた方が良いと思います。

インボイス制度が個人事業主に及ぼす影響とは?-②影響を回避する選択肢

さて、今回は以上です。

2023年から始まるインボイス制度は
個人事業主に影響が多大なことは
間違いありません。

だからこそ、このインボイス制度が開始される前が
免税事業者としての優遇を受けられる
最後のチャンスですので、開業や事業開始には
最適な時期とも言えます。

これから事業を開始しよう、副業を始めよう、
フリーランスで仕事を受けよう、
どういった活動でも始めやすい現在なので、
考えがある人は是非積極的に進めることを
おススメ致します。

その上で、事業開始・融資・確定申告・節税等
諸々のことに不明点があれば、
税理士と早い段階から付き合うのも手です。
どちらにしても、インボイス制度以降は
消費税の絡みで依頼することが濃厚です。
税理士のメリットを享受するなら、早い段階からどうぞ。

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さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。