こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

さて、今回のテーマも引き続き、
「インボイス制度」
に関してお話をしていきたいと思います。

<前2回:下記リンク参照>
※消費税、インボイス制度について-①知っておくべきこと消費税、インボイス制度について-②免税事業者が迫られる選択

2019年10月1日からスタートとなる
消費税増税、並びに軽減税率制度が
目前に迫っています。
ですが、今回の消費税関連の制度変更、
特に軽減税率制度に関しては
来たるべき「インボイス制度」の
序章に過ぎないという考えも出来ます。

この消費税導入開始以来の大変革といえる
「インボイス制度」は導入こそ数年先ですが、
現在の小規模事業者や個人事業者の方々が
メリットを最大限享受する為には
早めに動く必要があることもありますので、
現段階からチェックしておきましょう。

消費税、インボイス制度について-③免税事業者の優遇は有限になった

■消費税、インボイス制度について-③免税事業者の優遇は有限になった

前回はインボイス制度を踏まえ、
「課税事業者が迫られる選択」
というテーマでお話をしました。

要点をまとめますと、

  • インボイス制度導入後は免税事業者と取引する
    課税事業者に負担が乗る可能性が高い
  • 免税事業者は「免税事業者継続」か
    「課税事業者選択」のどちらかを選ぶことになる
  • 「免税事業者継続」の場合、
    消費税申告・納税は免除が継続するが、
    自分の請求に消費税分を付加することが難しくなる
  • 「課税事業者選択」の場合、
    消費税は問題無く付加できるが、消費税申告・納税の必要が出る。
    税理士との契約が必要になる場合も。

こういった点をお話しました。

前回、前々回を踏まえ、
免税事業者の優遇措置は
インボイス制度が始まるまでの間、
つまり、有限になったと言えると思います。

今回はそれを踏まえ、有限だからこそ
早めに動いてメリットを最大化させること、
更にインボイス制度導入後の経過措置等について
触れていきたいと思います。

●免税事業者の優遇って何だろう?

まず、現段階で免税事業者が享受している
(実質的な)優遇措置について触れていきます。

免税事業者の優遇措置は一言でいうと、

「消費税を受け取っても納めなくて良い」

ということになります。
非常にわかりやすいメリットですね!

一般消費者向けサービスでも、
企業間取引であっても、
自社の製品やサービスに消費税を乗せることは
現状として問題無く受け入れられている為、
免税事業者であったとしても
消費税を加算した金額を受領することは
ごく一般的な話だと思います。

ですが、受け取った消費税を
納めるか・納めないかというのは、
非常に大きい違いです。
現段階であれば8%、
2019年10月以降なら10%の
値上げをしているのと変わらない効果です。

具体的な金額で考えてみると、
税抜き売上が年間900万円の事業者であれば、
消費税8%だと72万円の消費税を年間で受け取ります。
この状況で本来消費税を納めた場合、
仮に原価等の経費で差引できる費用が50%だとすると、
72万円の半分である36万円が消費税の納付額になります。
この本来納めるべき金額を丸々受領出来るのが
免税事業者の優遇措置です。

●免税事業者である期間をフル活用するには?

ただ、上記のような状況は、
2023年(令和5年)10月1日以降は
実質的に通用しなくなります。
前回触れたように、免税事業者のままでは
消費税を乗せて請求するのが非常に難しくなるためです。

ただ、有限であることが明確になった以上、
免税事業者への優遇措置をフルで利用する為の
スケジュールもおのずと明確になります。

まず、保険適用の医科・歯科や接骨・整骨院以外の
一般的な事業者で、現段階も今後も
年商が税込1,000万円未満の事業者の場合、
消費税の観点だけ考えると、インボイス制度開始後は
「課税事業者」になった方が収入的には恐らく得をするはずです。

理由は、「適格請求書が発行出来ない」ことによる
取引先や売上の減少が無いことです。
免税事業者を継続して消費税の付加を拒否されたり、
取引先を断られたりすることが無いので、
収入にマイナスの影響がないからです。

次に、これから事業開始、もしくは既に開業していて、
起業後は早い段階で1,000万円超の年商を
突破しそうな事業者の場合、
何もしなければインボイス制度前に
課税事業者になってしまいますので、
2023年9月30日までは免税事業者として活動し、
2023年10月1日から課税事業者になる、というのが
優遇措置を最長で享受するスケジュールです。

これを念頭に置くと、
2023年10月1日から課税事業者として
「法人の3期目をスタートする」
ということになると思います。
※詳細は以下の表をご覧ください。

期間 事業形態 消費税課税 備考
2019年中 準備期間
(個人事業主)
準備期間
(個人:1期目)
なし(免税) 事業開始しても年商1,000万円未満に抑える
2020年1月1日~12月31日 個人事業主 個人:1期目 免税
2021年1月1日~9月30日まで 個人事業主 個人:2期目 免税 年度中で法人へ移行
2021年10月1日~22年9月30日 法人 法人:1期目 免税 法人(株式会社・合同会社)等を設立
2022年10月1日~23年9月30日 法人 法人:2期目 免税
2023年10月1日以降 法人 法人:3期目 課税 インボイス制度開始

個人事業主で事業開始し、個人事業の通年稼働1年目で
年商1,000万円を突破する場合は
翌々年から消費税の課税事業者になるので、
2期目の後半で法人になれば
「新設法人」ということで
更に免税事業者の期間が継続します。
当然、法人化しても事業は継続している訳なので
1期目から年商1,000万円は突破するでしょうが、
3期目のスタートをインボイス制度開始と時期をあわせれば、
結果としてこの時期には課税事業者になる必要がある訳ですから、
免税事業者としての優遇措置はフルで享受したことになります。

※注意※
こちらは2019年9月段階での情報です。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入時期や
消費税関連の税法やルール等が変更になった場合は、
当然状況も変わりますので、予めご了承ください。

●インボイス制度後の経過措置について

前回前々回、そして今回も上記までは
「免税事業者」側の話をしてきましたが、
インボイス制度開始後に
「免税事業者と取引を行う課税事業者」
に対しても、加えるべき情報があります。

それが
「免税事業者からの仕入に係る経過措置」
です。

過去2回で触れた通り、インボイス制度後は、
「適格請求書発行事業者」が発行する
「適格請求書」が無ければ、
消費税の課税事業者は仕入税額控除が出来ない、
ということになります。

ただし、それでも免税事業者と取引せざるを得ない、
もしくは意図せず取引・支払をしてしまうケースも
存在しますので、以下の期間は一定割合を
仕入税額控除として認める経過措置が設けられています。

期間 割合
2023年10月1日~2026年9月30日まで 仕入税額相当額の 80%
2026年10月1日~2029年9月30日まで 仕入税額相当額の 50%

さらに、この適用を受けるには、2019年10月1日から適用となる
「区分記載請求書(前々回説明)」と同等の事項が記載された請求書等と、
自社の帳簿にこの経過措置を利用する記載が必要になります。
※この経過措置情報も2019年9月段階の情報です。

詳細は下記リンクをご参照ください。

※国税庁

・消費税の仕入税額控除の方式として
 適格請求書等保存方式が導入されます
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

・経過措置(免税事業者からの仕入に係る経過措置)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-15.pdf

ただ、この経過措置があったとしても、
全額は仕入税額控除として認められないので、
免税事業者と取引を行う課税事業者が
消費税を請求された場合は損が増える、
というのは変わりませんね。

●インボイス制度の狙い

最後に、消費税導入以来の大改革と言われる
「インボイス制度」導入の狙いについて
触れたいと思います。

簡単に話をすると、最大の狙いは
「益税防止」と言われています。

「益税」とは、本来は国に納付すべき
消費税額が自社の懐に入ってしまう、
要は、消費税制度によって事業者が
利益を得てしまうことです。

上記で触れたような、現段階の免税事業者の
メリットがまさにそれですし、
それ以外にも本則(原則)課税であれば
納めるはずだった消費税を
簡易課税制度利用によって減額させることも
それに当たります。

そもそも、現段階でも国税側のスタンスとしては、
免税事業者が消費税を付加して請求することは
法律違反では無いのでNGとは言えないものの、
「免税されているのだから、
消費税を取得しないでほしい」
という考えであり、推奨はしていません。
※国税庁に電話して確認しました。

理由は簡単で、消費税を支払った分が
事業者の利益となるからです。

これは、ある税理士さんから聞いた話なのですが、
そもそも「インボイス制度」は
1989年の消費税導入時点から検討されていたようです。
ただ、当然というか、勿論というか、
当時も各種団体からの猛反発を受けたようで、
その結果、消費税導入だけで諦め、インボイス制度の導入は
しぶしぶ取り下げたという内容だったわけです。

ですが、今回軽減税率が導入されることにより
複数の消費税率が混在することになり、
インボイス制度の導入がしやすい状況と
なってしまったわけです。

まあ、個人的にはこの「益税」は
新規創業者や小規模事業者への支援として
容認されていたのではないかと思っていたのですが、
今後は実質的にその支援が受けられなくなりそうです。

消費税、インボイス制度について-③免税事業者の優遇は有限になった

さて、今回は以上です。

全3回にわたって話をしてきた
インボイス制度についてですが、
いかがでしたか?

来週からは消費税増税・軽減税率制度開始となります。
目の前に迫っているのも大きな変化ですが、
その先に待ち構えている更に大きな変化も
忘れずにチェックしておきましょう!!

上記で触れた通り、新規創業者や
小規模事業者が消費税の優遇(益税)を
受けられる期間は、
実質的にインボイス制度開始前までです。

事業を開始したりする場合は、
当然この間の方が有利な期間と言えます。

この有利な期間が存在するうちに
事業をスタートする、法人化する、
諸々開始するに当たって
税理士を検討されるようでしたら、
無料で紹介可能な下記サービスへ是非ご相談ください。

税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/

さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。