こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

さて、今回のテーマも引き続き、
「税理士業界の求人・採用状況」
に関してのお話です。

<前2回:下記リンク参照>
※税理士業界の求人・採用状況の考察-①自動化・AIの普及税理士業界の求人・採用状況の考察-②生産性優先へのシフト

税理士紹介業の弊社で
もっとも接触する方々は
「税理士を探されている方」
「既存税理士の変更を希望される方」
という事業者の人たちです。

そして、当然と言えば当然ですが、
それに次いで、多く接するのが、
「税理士」の人です。

今回は弊社が良く接する
税理士の方々から聞いた話をまとめ、
今後の税理士業界の求人・採用の
状況について、話をしていきます。

税理士業界の求人・採用状況の考察

■税理士業界の求人・採用状況の考察-③税理士の仕事は無くなるのか!?

前回は、生産性優先へのシフトにより、
求人・採用が少なくなっていくのでは?
という話をさせて頂きました。

自動化やAI等の技術が
税理士・会計業界に広がってくると、
1人当たりの生産性が大幅に向上します。

今までの考え方であれば、
1人当たり生産性が向上した状態で
更に人員を増加すれば、
業務拡大が加速度的に進む、
ということになったのかもしれませんが、

  • 人員採用リスク
  • 顧客・業務の新規受注
  • 利益配分

こういったことを考慮すると、
大規模な税理士事務所や大企業を除いて、
求人・採用活動に積極的ではなくなる
可能性があることについてお話をしました。

今回は、その生産性向上の
根幹を担うAI等に関連した話で、
「税理士の仕事は無くなるのか!?」
というテーマでお話をしていきます。

●税理士の仕事がAIにとって代わられる?

かなり話題になった内容なので、
耳にされたことがあると思いますが、
2013年にイギリスのオックスフォード大学で
AI(人工知能)の研究を行うオズボーン准教授らが
発表した論文の内容によると、
ここ10~20年くらいの間で、
人が行っていた仕事の約半分が
AIに置き換わってしまう可能性があるようです。
そして、消える仕事として具体的に
挙げられている職業も存在します。

その中には、
「税務申告書代行者」
という記載があります。

日本では、税務申告の代行は
有償・無償に関わらず、
税理士しか行うことが出来ないので、
この「税務申告代行者」というのは、
税理士のことを指します。

その結果、税理士に関しても、
AIに進出によって
無くなる・消える仕事として
話が上がってきているわけです。

●本当に税理士の仕事が無くなるのか?

では、本当に税理士の仕事は
無くなってしまうのでしょうか?

ここからは、諸々の事業主様や
税理士の方々と意見交換、
実際に税理士が応対する業務を
見てきた上での考察になりますが、
結論から申し上げると、
税理士の仕事は無くならない
と考えています。

ただし、大きく変わっていくのは、
間違いないと思います。
それにより、業界等の再編が加速されたり、
税理士として廃業せざるを得なかったり、
という人たちも出てくると思います。

●変わっていく仕事

まず、前回前々回でも申し上げた通り、
税理士・会計の業界に対して
自動化・AIの技術が進出してくるのは
間違いないと思います。

Fintech(フィンテック)という
言葉も一般的になった通り、
金融関連の業界・サービスに関しては、
新たな技術がどんどん入ってくると思います。
そして、それが税理士業界、税理士の業務に
及ぼす影響というのは非常に大きいです。

仮に、税理士業界側として
いくら進出を拒んだとしても、
便利になる・簡単になる・早くなる
というような自動化・AI技術に関しては、
顧客側が導入を決めてしまうため、
必然的に税理士側も応対せざるを得ない
という状態になってくるはずです。

そうなると、今まで人手をかけて
税理士事務所で行っていた、

  • 領収書整理
  • 会計ソフトへの入力
  • 帳簿作成
  • 確定申告書の作成

こういった業務については、
どんどん自動で行われていくように
なると思います。

上記のような業務は、
コンピューターやパソコンが無い時代には、
税理士(事務所)が主として
行っていた仕事ですが、
このあたりの業務については、
確かに一掃されてしまうかもしれません。

そうなると、現段階としても、
上記の業務だけを主としている税理士は、
業務の継続は難しいと思いますので、
本当の意味で、自動化・AIによって、
仕事を奪われてしまうということなるでしょう。

恐らく、税理士の仕事が無くなる、
という意見を述べる方たちは、
この内容でお話をしていると思います。

●税理士の仕事が無くならない理由

では、上記の業務が無くなったとしても、
税理士の仕事が無くならないと
考えられるのは何故でしょうか?

その理由についてお話をしていきます。

【理由1:相談・コンサルティング業務】

税理士の仕事は、
申告書作成の代行だけではありません。
「税務」と名がつく仕事に関しては、
はっきり言って、全て税理士の独占業務なので、
「税務相談」も税理士の業務です。

寧ろ、上記に記載した自動化・AIに
置き換わる部分の仕事に関しては、
申告書作成以外は、厳密に申し上げると、
「会計」分野に関わる業務なので、
現段階として税理士以外も応対可能な分野です。
※記帳代行会社等が存在するのはその為です。

その為、企業・事業者側が人間である以上、
会計データ・申告書データは
数字の結果ですので、
それを基に相談・助言を行う、
税法やその他制度の解釈を行う、
こういった所はまだまだ業務として
残っているという訳です。

確かに、AI等が進化していくと、
データを基に、ある程度の助言は出来ると思います。
融資可能額や納税予定額等は
税理士に聞かなくてもわかるように
なるかもしれません。

ただ、代表者や事業主が、
その数字を踏まえた上で、

  • 現段階で何をやりたいのか
  • 今後どうしていきたいのか
  • それが実現できるのか

このあたりまでなってくると、
実際に話を聞いて受け答えする人が
介在しなければならないと思います。

現段階で、既に事務作業のような
会計業務は税理士事務所として行わず、
純粋に顧問としての
相談・コンサルティング業務だけに
徹している税理士も存在します。

そうした事務所にとっては、
こういった自動化やAIの普及は、
反対どころか、大歓迎なのかもしれません。

【理由2:税務調査】

税理士の仕事が無くならないと考える
最大の理由がこれです。

税務調査が存在する限り、
恐らく税理士の業務は無くなりません。

理由は簡単で、
税務調査に立ち会えるのが
税理士だけだからです。

税務調査に関しては、
税務署の調査官、
つまり、人が行います。

調査官が自社に来て、
事業内容のヒアリングを実施し、
決算書・帳簿を確認し、
証票類(領収書・請求書等)までチェックする。

その上で、疑義のある内容について
やり取りを行います。
さらに、税務調査は当日だけでなく、
終了後も調査官とやり取りが発生します。

税務署側も既にシステムの導入は始まっており、
全ての申告内容をチェックして、
税務調査対象企業を選別しているわけではありません。
ただ、調査対象件数の少なさに関しては、
毎年の税務行政の課題として
挙がっているので、
更なる効率化等を進める為に、
新たなシステム導入等が行われる可能性はあります。

ですが、最終的な税務調査を
調査官が実施している状況において、
税理士(税務調査に立ち会える人)を
無くしてしまうと、
全ての企業・事業主だけが、
自分たちだけで調査に臨むことになる為、
圧倒的に企業側が不利になります。
弁護士を立てられない裁判のようなもので、
この状況になるのは考えらえません。

将来的に、税務署に調査官が存在せず、
税務調査当日もロボットが訪れる・・・
というレベルになった場合は、
税理士もロボットかもしれませんが・・・
極端な話、このくらいまで進まないと、
税務調査における税理士の仕事は、
無くならない可能性が高いと思います。

ただし、現段階もチラホラ見られますが、
弁護士の中で、税務調査を業務範囲にしようと
考えている方が存在します。

  • 弁護士も税理士になれること(※)
  • 税務調査は法解釈の問題が出る可能性があること
※日本国内の法律だと、弁護士有資格者は、
 無試験で税理士登録が可能です。

このあたりを理由に展開してきているのですが、
このような弁護士が増加してくると、
税理士の仕事は無くならないが、
(現在の)税理士が業務を受注できるかは別問題、
ということが起きるかもしれません。

税理士業界の求人・採用状況の考察-③税理士の仕事は無くなるのか!?

●ちなみに・・・

先のAIの普及により消える仕事の中には、
「会計監査」に関わるものがあります。

日本では、会計監査の仕事は、
公認会計士しか
行うことが出来ません。

ということで、こちらに関しても、
消える仕事としての話が
進んできていますが、
どちらかというと、
税理士の業務よりも、
会計監査、公認会計士としての
業務の方が消える可能性が高いと
考えられている方が多い印象です。

実際に、公認会計士資格者で
活動されている方に関しても、
「多分、無くなるでしょうね」
という前提で動いている方もいます。

ただ、そうは言っても、公認会計士、
もっと言うと監査法人の役割は、
現在の経済活動(特に株式市場等)に
非常に大きい責任のある
仕事内容なので、
10年~20年くらいで本当になくなるのか?
という部分には疑問を抱いていらっしゃいますが、

  • 自分が現役を退く時まで、この仕事を継続できるか?
  • 自分の子供にも公認会計士を目指させるか?

こういった長いスパンで考えると、
恐らく厳しいと思う、という考え方を
している公認会計士の方が多い印象です。

さて、今回は以上です。
3回にわたってまとめてきた
「税理士業界の求人・採用状況の考察」
という内容ですが、いかがでしたか?

こちらの考察としては、

  • 自動化やAIによって業界の効率化が進む
  • 生産性優先シフトとなり、個人事務所では採用が少なくなる
  • AIが進出しても、税理士としての業務は残る

このあたりの内容に触れさせて頂きました。

この考察が正しいのかどうかは、
正直、時間がたってみないと・・・
という状態ではありますが、
業界の大きな過渡期であるのは事実だと思います。

現段階はまだまだ税理士・会計業界として
求人・採用が多い状況ですが、
いつまで継続するかは不明瞭です。

この業界に踏み込んでみたり、
転職を考えたりするには、
今が良いタイミングかもしれません。

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それでは、また次回宜しくお願い致します。