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さすらいの情報収集家Kです

今回は、「日欧EPA」についてです。
しっかりチェックしておきましょう!




日欧EPA大枠合意 その中身とは?

2017年7月。
日本とEUの経済連携協定EPAが大枠で合意しました。
これにより、日本とEUは貿易品目の90%以上で
関税撤廃するとしています。
その中身はどのようなものなのでしょうか。
今回は、EPAについてまとめてみます。

●日欧EPAとは?

EPAを説明する前に、まずはFTAをおさらいします。
FTAとは、Free Trade Agreementの略で
自由貿易協定のことです。
その中身は、物品の関税やサービス貿易の障壁等を
削減・撤廃する
ことを目的とする協定のことで、
あくまでも経済的な輸出入に関する協定の範囲に収めます。

一方で、EPAとは
Economic Partnership Agreemenの略で
経済連携協定のことです。
これはFTAの範囲に加え、
投資、人の移動、知的財産の保護や
競争政策におけるルール作り、
様々な分野での協力の要素等を含む
幅広い経済関係の強化
を目的とする協定です。

ちなみに、EPAと同時にSPAについても大枠合意しました。
SPAとは、Strategic Partnership Agreementの略で、
戦略的パートナーシップ協定のことです。
基本的価値観を共有する日欧が
政治、国際的課題などで
戦略的に協力していくことを取り決めたものです。
具体的には、軍縮・不拡散、テロ対策、温暖化、
教育、司法等の幅広い分野について一般的な協力

規定するもので法的拘束力を持つとされています。

このように今回の日欧合意は、
自由貿易の範囲を超えて
より幅広い経済協定や
戦略的に強調していくことを
合意したと言うわけです。
では、その中身はどのようなものでしょうか。

●日欧EPAの中身とは?

まずは、規模を確認してみましょう。
EUは総人口約5億人、
世界のGDPの約22%を占める連合体です。
日欧EPAが締結されると、
世界のGDPの約3割をカバーする経済圏が誕生し、
日欧貿易のハードルが一定程度下がり、
活発になると考えられています。

日欧の貿易の状況は、
日本からの輸出額が約8兆円、
輸入額が約8.2兆円という状況で、
人口・GDP比率等から考えると、
比較的低調であると言えます。

特に、EUの輸入相手国TOP10を見ると、
日本は第6位でわずか輸入総額の
約3.9%に留まっています。

【日欧の貿易関係(2016年)】

今回の日欧EPAは、こうした状況に
テコ入れするということが主な目的でしょう。

●具体的な品目は?

日本側の主な交渉項目は、
EU側の鉱工業品等の関税撤廃や
非関税障壁となる規制上の問題のようです。
EUでは日本からの関税で乗用車10%、
自動車部品3~4%、テレビ14%となっており、
比較的高い関税がかかっています。

一方、EU側では農産品等の市場アクセスの改善、
非関税措置(自動車、化学品、電子機器、食品安全、
加工食品、医療機器、医薬品等の分野)への対応等
を挙げているようです。

EUからの輸入関税は、ボトルワイン1本に最大約93円、
チーズ原則29.8%、豚肉は安い肉1キロ482円・高級肉4.3%、
パスタ1キロ30円となっており、特にチーズに関しては
高い関税がかかっていると言えます。

今回の大枠合意で、実際にどこまで決まったのかは
正式に公表されていませんが、一部の報道では
概ね撤廃または段階的に引き下げる方向で
折合がついたとされています。

特に注目のワイン・チーズについては、
ワインは即時撤廃、チーズはソフトチーズを中心に
低関税率の枠を3.1万トン新設するということのようです。

●各業界の反応は?

今回の合意で早速各業界が反応を見せ始めています。
自動車業界としては、一般社団法人日本自動車工業会が
歓迎を表明しています。
実際のところ、自動車産業はグローバル化が進んでおり、
輸出から現地生産へシフトしてきたため、
直接的な効果は大きくはないと言えそうですが、
部品等の関税撤廃については一定の効果がありそうです。

※参考)日-EU経済連携協定(EPA)の大枠合意についてー日本自動車工業会
http://release.jama.or.jp/sys/comment/detail.pl?item_id=562

また、打撃が大きそうなチーズ業界ですが、
一般社団法人日本乳業協会が懸念を表明し、
国内対策を求めています。

※参考)日EU・EPA交渉の大枠合意に係る要請事項についてー日本乳業協会
http://www.nyukyou.jp/update/20170802.html

それもそのはずで、今回合意されたとされる
ソフトチーズの低関税率の新設3.1万トンは
実はかなり量が多いと言えるからです。

国産のナチュラルチーズの生産量は、
約4.6万トンで生産工房も増加していると
言われています。

つまり、国内生産の約7割程度が
低関税率で輸入されることになるというわけです。
これは「国産チーズを輸入品に置き換える」
という意味を持つと言えなくもありません。
実は、このソフトチーズはTPP交渉でも
守り抜いたと言われる分野でしたが、
日欧EPAで風穴が空いた格好になりそうです。
国産チーズへの打撃は、国内の酪農にも
多大な影響を与えるはずですから、
その影響範囲は大きなものになりそうです。

●日本・EUの思惑は?

前回、RCEPの思惑についてご説明しましたが、
今回の日欧EPAについても
表向きとは違った思惑がありそうです。

日本としては、やはり自由貿易圏の拡大、
つまり事実上の中国包囲網でしょう。
先に挙げたEUの輸入先を
確認してみるとわかるのですが、
実はEUの最大の輸入先は中国なのです。
その規模は、ダントツのEU輸入量の約20%、
総額約41兆円です。
これは日本の5倍以上であり、
EU諸国からの中国までの輸送距離を考えても
異常に多いと言えると思います。
そのため、EUがしばしば中国への批判を見送る
ということが起きています。

※参考)EU、中国の人権侵害を批判できず 
強まる影響力の前に口を閉ざす民主主義陣営
https://newsphere.jp/world-report/20170628-4/

本来であれば、中国の活動家や少数民族への弾圧等の
人権侵害に対して、率先して声を上げるべき立場のはずですが、
巨大な経済力を前に口籠る・・・
という何ともお粗末な状況です。
日本もあまり人のことを言える立場にありませんが、
中国問題に限っては見過ごすことができませんから、
このままEUが中国に取り込まれてしまうのを防ぎたい
というのが本音でしょう。

日本との貿易額が10%程度まで増えることになれば、
その影響力も高まるでしょうし、
自由主義陣営の貿易ルールを担保することができます。
特に今回はEPAだけでなく、冒頭に触れたSPAも大枠合意しており、
北朝鮮の軍拡や中国の海洋進出、環境問題への対応と
中国がすんなりと受け入れられない課題が多く含まれています。

つまり、今回の日欧EPAはTPP、RCEPと続く
一貫した戦略のもとで進められてきたと言えそうです。
日本がこうした長期戦略のもとで動けているというのは、
長期政権ならではなのかもしれません。

一方、EUの思惑としては、やはりイギリスへの当てつけ
と言えるのではないでしょうか。
イギリスがEU離脱(ブレグジット)を表明してから、
その具体的な交渉は難航しています。
というよりは、取りつく島がない状況のようです。
ですから、「EUを離脱しイギリス一国になってしまえば、
日本のような大国と有利に交渉できると思うなよ?」
と言いたいわけです。
そういう意味から、日本との交渉においては、
わかりやすいメリットがほしかったのでしょう。
それがワインやチーズなどの農産品だった
ということのようです。

また、ブレグジット問題以降、
EUそのものの意義が問われ始めています。
特に、EUの権限は強く、加盟国の国民からは
「EUに縛られたくない」、
「EU法による過度な規制が中小企業の経営を圧迫している」、
「EU法上は難民受け入れを拒否できない」
といった声が上がり始めているようです。

「EUに縛られている」と感じている世論に対して、
EUに加盟しているからこそのメリットを
提供したいと考えているようです。
そう思っていたところに浮上してきたのが日欧EPAで、
「ならば合意せねば」ということだった
のではないでしょうか。

実際、欧州理事会常任議長ドナルド・トゥスク氏は、
日欧EPAの大枠合意後に次のようにコメントしています。
「我々はEU外で国際貿易を行うのがより簡単なのに、
EUにいる価値はないというコメントを聞いてきた。
今日、それが真実ではないこと、
またEUがますますグローバルになっていることが示された」
と述べたとのこと。実に誇らしげで嬉しそうです。

そうなると黙っていられないのは、
当てつけられたイギリスです。
先週、メイ首相が産業界幹部を引き連れて、
あわてて来日しました。
その内容は明らかにされていませんが、
「今回の日欧EPAと同じ条件でイギリスともよろしく」
という趣旨だったようです。

実は、キャメロン前政権が
「日欧EPAが英国経済に年間50億ポンド(約7090億円)の
恩恵をもたらす」と発言していたこともあって、
メイ首相は少なからず同等の効果を
日本との交易に求めたいという立場に
立たされているということのようです。
早くもEU側の当てつけ戦略が
効き始めていると言えそうです。

こうなってくると、
日本はかなり有利な立場にある
のではないでしょうか。

欧州の政治誌ポリティコは、「日本のような経済大国が、
EUと同等の条件をイギリスに与えるのかは疑問。
日本は巨大な経済圏であるEUにはかなりの譲歩をしたが、
規模のずっと小さなイギリスに対しては、
むしろ自国の主要産業に有利な条件を
徹底的に議論する構えだろう」と述べています。

つまり、日本はイギリスに対して
有利に交渉することができる環境が
勝手に整ったという状況です。

振り返るとイギリスのエリザベス女王陛下が
習近平主席をお出迎えしたことが記憶に新しいですが、
今回の日欧EPAで図らずとも転がり込んだ
有利な立場をどのように使うかは見ものです。

また、使いようによっては
イギリスとの交渉をテコにして、
日欧EPAの条件を日本に有利にすることも
できるかもしれません。

以上、いかがでしたでしょうか。
日欧EPAの大枠合意は、
それぞれの思惑が合致したということのようです。
そして、ブレグジットを契機として、
日本がEUとイギリスを両天秤にかけることが
できるような立場になるかもしれません。

とは言え、日欧EPAはまだ大枠合意段階で、
具体的に詰めはじめるといろいろと揉めそうですから
今後も注目していきたいところです。

次回は、この流れでイギリスのEU離脱についてです。
それでは、今週の報告は以上です。
次回も宜しくお願い致します。