諜報部長!お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです

今回は、「RCEP(アールセップ)」
についてです。
しっかりチェックしておきましょう!

■RCEPって何? その中身とは?

最近ニュースなどで耳にする
「RCEP(アールセップ)」ってご存知でしょうか。
今回は、今後注目されることになる
RCEPについてまとめてみたいと思います。

●RCEP(アールセップ)とは

“Regional Comprehensive Economic Partnership”の略で、
国内では「東アジア地域包括的経済連携」と訳されます。
このRCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に
16カ国が参加する広域自由貿易協定(メガFTA)のこと。
RCEPが実現すれば、人口約34億人(世界の約半分)、
GDP約20兆ドル(世界全体の約3割)、
貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)
を占める広域経済圏が出現することになると言われています。

かつてはTPP(環太平洋経済連携協定)
に力を入れていた我が国ですが、
米国でトランプ政権誕生・TPP離脱表明
となったことで、RCEPに注目が集まってきたというわけです。

また、その参加国は、
ASEAN10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、
日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド
の6カ国となっていて、これまで様々な交渉を行ってきた
アジア圏での統一市場の構築が期待されています。

これまでの広域的な経済統合の動きを見ると、
比較的参加国が重複しているため
「RCEPはまとまりやすいのでは?」
という見方もあります。

●RCEPの構想とは

RCEPの構想とは、どのようなものでしょうか。
現在は交渉段階で形あるものが
決まっているわけではないのですが、
少なくとも次の8分野が
交渉範囲とされています。

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Ⅰ.物品貿易

RCEPは、参加国の間で自由貿易地域を構築するために、
実質上全ての物品貿易についての
関税及び非関税障壁を漸進的に撤廃することを目指す。
関税交渉は包括的なものとして行われる。
このような交渉は、RCEP参加国の既存の自由化レベルを基礎として、
また、品目数及び貿易額の双方で高い割合の関税撤廃を通じて、
高いレベルの関税自由化を達成することを目指すべきである。
関税の譲許は、地域的な経済統合の利益の最大化を追求すべきである。
ASEANの後発開発途上国の関心品目の
早期関税撤廃は、優先事項とする。

Ⅱ.サービス貿易

RCEPは、包括的でかつ質が高く、
また、RCEP参加国の間でのサービス貿易に関する制限
及び(又は)差別的な措置を実質的に撤廃する。
RCEPの下でのサービス貿易に関する規則及び義務は、
サービスの貿易に関する一般協定(GATS)に整合的であり、
GATS及びASEAN+1FTAにおけるRCEP参加国の約束を
基礎として自由化約束の達成を目指す。
全ての分野と提供形態が交渉の対象となる。

Ⅲ.投資

RCEPは、地域において自由な、円滑な、かつ、
競争力のある投資環境を作り出すことを目指す。
RCEPにおける投資交渉は、
促進、保護、円滑化、自由化の4つの柱を含む。

Ⅳ.経済及び技術協力

RCEPにおける経済及び技術協力は、参加国間における開発格差を縮小し、
RCEP協定の実施による相互利益を最大化することを目指す。
RCEPにおける経済及び技術協力の規定は、
ASEAN及びRCEPに参加するASEANのFTAパートナー諸国との間の
既存の経済協力の取決めを基礎とする。
協力活動には、電子商取引及びRCEP参加国によって合意される
その他の分野が含まれるべきである。

Ⅴ.知的財産

RCEPにおける知的財産に関する条文は、
経済統合及び知的財産の利用、保護、執行における
協力を推進することにより、貿易及び投資に対する
知的財産権関連の障壁を削減することを目指す。

Ⅵ.競争

競争に関する規定は、競争分野における能力
及び国家制度に関するRCEP参加国の間の
大きな差異を認識しつつ、競争、経済効率
及び消費者の福祉の促進、並びに反競争的な慣行の抑制
に関する協力を行う基礎を参加国に提供する。

Ⅶ. 紛争解決

RCEPは、協議及び紛争解決のための効果的な、
効率的な、かつ、透明性のあるプロセスを提供する
紛争解決メカニズムを含む。

Ⅷ. その他の事項

RCEP交渉は、RCEP参加国間のFTAで包含されており、
交渉の中で特定され、及び合意される他の事項を含めることを検討し、
かつ、ビジネス実態に即して新たに生じる事項も考慮する。

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ザックリ言えば、最終的なRCEP加盟国は、
物品・サービス共にできる限り関税・非関税障壁を撤廃し、
知的財産・投資家を守る開かれた貿易協定を結ぶこと
を目指しているということのようです。

TPPと比べると、環境分野での制限がないこと、
「関税を原則撤廃」としたTPPより
RCEPは「漸進的に撤廃することを目指す」と、
ゆるくなっていることがわかります。
そうした意味では、TPPよりは比較的ハードルが低い
と言えるかもしれません。

●どんなメリットがあるの? デメリットは?




徐々に注目の集まってきた
RCEPにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、デメリットはどのようなものでしょうか。
最終的に決定されているわけではないので、
全て推測ですがザックリ言うと次の通りです。

(メリットは○、デメリットは×)

【全体として】

○ 企業が将来的に有望な市場に参入しやすくなる

○ 日本の輸出総額の半分を占めるRCEP地域との貿易の活性化

○ 制度が一本化して、企業が利用しやすくなる

現在のASEAN内の個別協定で、同じ分野で異なる制度
となっているケースも少なからずあり(原産地証明のルール等)、
そうしたものが統一されることで企業の進出や
輸出入が活性化しやすくなると考えられます。

【工業】

○ RCEP地域で生産された工業製品を中国などで安く販売することができる

× 関税撤廃でグローバル企業が価格競争に陥り、中小企業にしわ寄せがくる

工業製品の自由化が進むと、
製品の一部や全部を海外の安い工場で生産しやすくなり、
それによる革新的なコスト削減効果から
安い商品を途上国へ等へ輸出できるようになると考えられます。
その一方で、製造工程のグローバル化が
より加速することになり、国内中小企業への打撃は
大きなものになると思われます。

【農業】

○ 消費者が農作物を安く買えるようになる

○ 日本の農作物の海外進出が容易に

× 輸入農作物の値段が下がり、国産の農作物は価格競争に負ける

× 食料自給率が現状の約 40%から 20%近くまで落ちる試算

消費者にとってはメリットがあると言えますが、
農家にとっては良いことはあまりないでしょう。
いわゆる「攻めの農業」で海外進出が容易になると言っても、
現在の農家は平均年齢が65歳以上の高齢者達であり、
そうした高齢農家にこれから輸出しろと言う事になります。
そういう意味では、現在の農家は切り捨て、
世代交代や企業の農業参入などにより
活性化を図るということなのでしょう。

【投資】

○ 制約がなくなり、より多く自由に投資できるようになる

× 金融資産が諸外国へ流出

原子力、宇宙開発など、特別な協定がない限り
投資できない分野の規制を取り除くことができれば、
官民ともに投資しやすくなり、
結果的に国内産業の活性化が図られる可能性があります。
その一方で、国内投資の低い利回りより
RCEP地域の高い利回りとなる投資案件が活性化し、
国内投資の減少や国内資産の流出などが懸念されます。

【知的財産】

○ 模造品や海賊版の出回りを防ぐことが出来る

× 医薬品など知的財産の保護期間が短縮される可能性がある

知的財産の意識が希薄だったり、
取り締まりが十分行われていない国が
知的財産をしっかり守ることによって、
これまで取り逃していた利益を
ちゃんと回収することができる可能性があります。
また、しっかり守られるのであればと
新たに知的財産を活用する機会も増えることになるでしょう。
その一方で、医薬品などを中心に
特に長期間の保護を求めている業界においては、
保護期間の短縮等が求められる可能性が高く、
必ずしも良いことばかりではないと言えそうです。

●RCEPの交渉とは

RCEPの交渉においては、基本指針が公表されています。

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【RCEP交渉の基本指針】

  1. RCEPはGATT第 24 条、GATS第 5 条を含むWTOと整合的である。
  2. RCEPでは、参加国の個別のかつ多様な事情を認識しつつ、
    既存のASEAN+1FTAよりも相当程度改善した、より広く、深い約束がなされる。
  3. RCEPは、貿易及び投資を円滑化する規定、参加国間での貿易
    及び投資関係の透明性を向上する規定、
    及び国際的、地域的サプライチェーンへの参加国の関与を促進する規定を含む。
  4. 参加国の異なる発展段階を考慮し、RCEPは、適用される場合には、
    既存のASEAN+1FTAに整合的な形で、特別のかつ異なる待遇
    並びにASEAN加盟国の後発開発途上国に対する
    追加的な柔軟性についての規定を含む適切な形の柔軟性を含む。
  5. ASEAN+1FTA及び参加国間の二国間・多数国間FTAは存続し、
    RCEP協定のいかなる規定もこれらの二国間・多数国間FTAの条件に影響を及ぼすことはない
  6. 当初から交渉に参加しなかったASEANのFTAパートナー国は、
    他の全ての参加国が合意する条件に従い、交渉への参加が許される。
    また、RCEP協定には、RCEP交渉に参加しなかった
    ASEANのFTAパートナー国及び域外の経済パートナー国が
    RCEP交渉完了後に参加できるよう、開かれた加盟条項が設けられる。
  7. 技術協力及び能力開発に関する規定は、ASEAN+1FTAを基礎として、
    全ての参加国が十分に交渉に参加し、RCEPの下での義務を実施し、
    RCEPの利益を享受できるよう、RCEPに参加する途上国
    及び後発開発途上国に対して利用可能となり得る。
  8. 包括的かつバランスのとれた成果を確保するため、
    物品貿易、サービス貿易、投資及びその他の分野の交渉は並行して行われる

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つまり、WTO(世界貿易機関)協定に準じる形で、
国際貿易のルールを開かれたものに
統一して行こうという趣旨で交渉が行われているようです。
また、その交渉内容や途中経過は、非公開となっているため、
実際のところ、どのような交渉がなされたのかはわかりません。

担当大臣の会見やインタビューから推察するしかなさそうです。
とは言え、やはりRCEPには中国・インド
という大国が含まれているため、
両国の意向が強く反映される可能性が否定できません。
また、そうしたことから上手くまとまらず、
こう着状態になる可能性も少なくないと思います。

では、実際のところ、今どのような状況なのでしょうか?
そして、今後どのようになるのでしょうか?

次回は、RCEPの今後についてまとめてみたいと思います。

それでは、今週の報告は以上です。
次回も宜しくお願い致します。